活動

2017年2月7日

2016年12月16日~18日に行われた第1回領域会議について、若手からのコメントが届きました

第一回領域会議感想

九州大学医学部生命科学科学部 4年
松原周蔵

2016年12月16日から18日までの3日間、中島研のメンバーとして宮城県松島で行われました新学術領域研究「個性」創発脳の第一回領域会議に参加させていただきました。本学会は多様な個性を創発する脳システムの統合的理解を目的としており、神経系の中で様々な研究室が参加したのはもちろん、文理の垣根を越えて普段は耳にすることのないお話を拝聴させていただきました。

ヒトにおける「個性」創発のA01ではヒトの行動計測や脳のイメージング、さらには「個性」を科学がどうとらえるのかについて問題提起がされていました。動物モデル「個性」創発のA02では、実験動物を用いて遺伝子改変、環境的介入、ゲノム/エピゲノム解析表現型解析、「個性」創発研究のための計測技術と数理モデルのA03ではツール開発、シュミレーション、ベイズ確率解析、因果解析の研究発表が行われました。

「個性」という今まで評価の対象ではなかったものを捉えなおすために、複合領域としてヒトモデル、生物モデル、数理モデルを通して「個性」をとらえる体制が着々と築かれていると感じました。

また、二日目の総合討論においては特に「個性」をどう定義してどのように評価するのかということが学生、スタッフを巻き込んで議論を呼んでいました。その中で首都大学東京の言語科学教室の保前先生の「集団が存在しその中で平均化され共有がなされたものが必要」や「個性は受け止める側が必要」というお話が特に印象的でした。個体差を誤差として平均化して評価することが当たり前であった自分にとっては、驚きの連続で未知の科学に触れていること実感できました。

以上のように本学会を通じ、自身の研究を遂行していく上での課題、アイデアだけでなく、研究への取り組み方、姿勢など、多くを学ぶことができ、大きな収穫となりました。

また、私自身今回が初の学会参加ということもあり、他の研究室との親交を深められたことをうれしく思うと同時に、これから切磋琢磨していく同世代の方々とお話しすることが出来、気が引き締まりました。このような素晴らしい新学術領域を発足・運営されている領域代表の大隅典子先生をはじめ総括班の先生方、また各所でお世話になった諸先生方へ厚く御礼申し上げます。

「個性」創発脳第一回領域会議に参加して

国立精神・神経医療研究センター 病態生化学研究部
早稲田大学先進理工学研究科生命医科学専攻
修士一年 足立透真

言語や抽象的思考に代表される脳の高次機能は、脳に存在する神経活動の創発であると言っていいと思います。

自分は、いつか脳の高次機能の解明に携わりたいと考えて研究を始め、その将来に繋がると信じて、現在は神経活動や神経内部での分子動態の研究を行っています。神経の内外で行なわれている微細な動態は、知るほどにその精緻な細工に驚嘆するばかりで、何のためらいもなくその探究に時間を費やすことができます。ところが、それらのメカニズムの解明がどのように創発としての脳活動の解明に繋がっていくのか、現代のサイエンスにおいては依然としてそこに溝が存在するのではないかと感じることもあります。

今回のテーマである「個性」は、定義すら難しい概念ですが、その内の少なくとも何割かは、脳の高次機能の現れであると考えます。今回の会議は、様々なバックグラウンドの先生方がいらっしゃるものでしたが、そうした先生方が、それぞれの研究を武器として、「個性」という一つのテーマについて意見を交え合う様は、この会議が、脳の高次機能と神経の微細動態の間を繋ぐ架け橋になりうるものなのではないかと感じさせるものでした。20世紀の哲学者たちが、悟性と理性を頼りに定義した概念が、実験によって証明される時代が遂に来るのかもしれない。そう期待させられる会議でした。

まだまだ貢献できるレベルではない自分ですが、今回の経験を糧に、頑張っていきたいです。そして、いつか架け橋の一端を担っていける人材になれることを目指したいと思います。