活動
2018年2月14日
国際連携活動報告:イスラエル訪問記
京都大学 医学研究科
特定助教・鈴木 裕輔
2017年9月9日夕方,イスラエル滞在の最終日に,テルアビブのビーチに面した小汚い料理屋で,ここに来ることになったきっかけを振り返ってみました.これまでの人生で,イスラエルを訪れることになるとは全く予想しておりませんでしたし,多くの人にとってもそうではないでしょうか.しかし私の場合,今回の訪問を期に,その機会は今後ずっと増えそうです.
2017年9月3日から8日まで,David Eilam 教授 (Dept. Zoology,Tel-Aviv Univ., 図1) のもとを訪ねました.Eilam 教授は,動物行動学をご専門としながらも,動物の行動を定量的に記述するために,様々な分野の知識・技術を積極的に導入されており,例えば,ネットワーク解析を用いて,動物の空間探索行動に潜むトポロジカルな構造を発見されています.これは,動物行動学と電気生理学が専門で,当時 Eilam 先生の大学院生だった Shahaf Weiss 博士 (現 Max Planck Institute for Brain Research., 図2,3) との仕事です.その論文を,当時,私が新たな行動解析手法を模索するなかで偶然見つけ,幾つかの技術的な疑問点を Shahaf 博士に投げかけたのが,今回の訪問のきっかけだったように思います.その後,北米神経科学学会やオンラインでの議論を通して,共同研究の形が次第に明確になっていきました.今回の訪問の目的の一つは,Eilam 教授,Shahaf 博士と,空間探索行動から個性を抽出する試みについて議論することでした.実際に,ほぼ常時議論している状態となり,多くのアイデアや人間が現れ,刺激的な時間を過ごしました.Eilam 教授はまた,社会的相互作用が個体の空間探索行動に与える影響について研究されており,今年の7月に開催される「個性」創発脳 第一回国際会議で,その知見をご紹介いただけるかと思います.
滞在中,Shahaf 博士の博士論文の公聴会が開催され,これに出席する機会をいただきました.聴衆が,学外学内問わず,電気生理学や都市工学の専門家など多彩な顔ぶれだったのが印象的でした.都市工学は一見すると彼の仕事と関連がなさそうですが,人を含めた動物の空間探索行動を都市設計に活かす試みと聞くと,確かに納得します.短い滞在期間でしたが,様々な分野の知識・技術が,密な人的ネットワークを介してぶつかり合い,新たな知識を創発する,スタートアップ大国の一端を垣間見た気がしました.
最後に,新学術領域「個性」創発脳の国際連携活動の一環として,ご支援いただけたことに深く感謝いたします.今回の訪問から生まれたプロダクトを育て,個性創発のメカニズムに迫る研究を推進していく所存です.
図1: David Eilam 教授と議論している写真.
図2: Shahaf 博士の公聴会の風景.
前で立っている二人のうち左側が Shahaf 博士,右側は指導教官の一人で Technion の Dori Derdikman 博士.
図3: 公聴会後に学食で議論している写真.
中央が Derdikman 博士,右側が Shahaf 博士