活動

2019年8月22日

2019年8月1日~3日に行われた第4回領域会議について、若手からのコメントが届きました

第4回領域会議感想

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
生命創成探究センター 認知ゲノム研究グループ
辰本 将司

まず始めに、博士取得後10年以上経過していますので、若手には入らないと思いますが、領域会議の感想について書かせていただきます。第一回から参加して、常に考えさせられるのは、個性の解釈についてです。私の学位は知識科学で、学生時代は知識に関する講義を受けました。そこで、特に思い出されるのが、暗黙知と形式知です。私なりの「個性」を考えると、暗黙知にある知識は個性でなく、形式知になって初めて個性になると思います。言い換えると、お互いに認識できる知識(形式知)によって初めて個性が確認できる。これは、暗黙知にある知識は個人に依存し、学問として継承することが困難であることから考えます。個性とは、違いを表す言葉でなく、自分以外の他人と共通の知識(形式知)を介して、物事を認識し共有することだと考えます。研究者はこれまでに解明されなかった現象について、経験(暗黙知)に基づいて実験を行い証明することで、他者にも認識できる言語・記号で説明することによって形式知化し、個性を創造する作業を行っていると考えます。さらに、個性とは個体だけでなく、個体が集まった集団としての現象も創発を介して、個性になると考えます。私の勝手な考え方の例になりますが、近交化したマウスにおける好む場所の違い、蟻や蜂の集団の中で攻撃的な集団は、まだ個性の段階でなく、科学的な意味づけを行うことで個性となると考えます。これらを踏まえて、私が考える領域会議とは、異なるバックグラウンドを持つ研究者の方々が、活発に議論することで、新たな個性の芽を創造する瞬間に立ち会える場になります。第一回から、このような貴重な経験を積むことができる場を作り上げられた大隅先生、会議を運営し、ご尽力いただいた皆様、そして、参加者すべての方々に厚く御礼お申し上げます。

第4回領域会議に参加して

東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
機能画像医学研究分野 博士課程4年
松平 泉

非凡な人だと思われたい、特殊でありたい。唯一無二の、個性的な自分でありたい。ところが個性的な他人に会った途端「すごく個性的な人だね」と、虐げたそうに言ってしまう。本当に非凡なあの人は、私の凡庸さを浮き彫ってしまいそうで恐ろしい。特殊に見えるあの人は、私を普通に見せてくれるからありがたい。「一人一人の個性を大切に」「個性を伸ばしましょう」当たり前に唱えられ、復唱してきた教育的文句に、薄ら寒さを確かに感じている。

第4回領域会議に参加させて頂いてから十日、個性というキーワードはこのような形で私の中を堂々巡りしています。曲がりなりにも神経科学サイドの人間でありながらいかにも陳腐で非科学的な思考は悩ましい限りですが、今の自分が捉えている個性とはこれくらいなのだと理解できます。

領域会議では計画研究・公募研究を遂行されている多くの先生方のご講演を拝聴致しました。また、ポスター発表時には著名な先生方が私の研究内容にご助言をくださいました。しかし、第一線の研究について聴けば聴くほど、多様な角度からご意見を頂けば頂くほど、自分の中で「個性」という語彙の意味が不明瞭になっていきました。先生方のご研究すら未完成であること、そしてこれまでの自分自身が実は個性について大して考えていなかったのだということを認識しました。自分の持っている解析結果が個性の何を明らかにしているのか、はっきりと言葉にすることがまだできません。

現在の私は学生ですが、いずれは科研費の申請資格を持ったプロの研究者となると思われます。個性がテーマであろうとなかろうと、その時の私は、今回の会議で拝聴したご研究内容の、更に先を進んだ計画を持っていなければなりません。その計画の結果がこの世の何を説明するのか、深く深く考える力を持っていなければなりません。初めて参加させて頂いた領域会議は、自分が研究者としてどのように成長していきたいのかを考える契機となりました。