活動

2019年12月13日

国際連携活動報告:German Cancer Research Center (DKFZ) 訪問記

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病態生化学研究部
研究生 足立 透真

2019年7月28日から9月30日まで、ドイツ・ハイデルベルクにあるGerman Cancer Research Center (DKFZ)を訪問して来ました。DKFZでは、Professor. Dr. Stefan Pfisterが率いる小児神経腫瘍学研究室でお世話になりました。このグループは、ヒト、マウスのビッグデータや癌の患者さんから摘出した腫瘍細胞 (PDX)を用いて、癌の分類、分子機構の解明、治療法の確立と、長年癌研究において最先端を走り続けています。研究は非常に体系的に行われており、Clinician、Bioinformatician、Biologistが三位一体となって、Core facilityに支えられながら実験を行なっていました。研究室内では常にコーヒーを片手に持った議論が繰り広げられており、綿密な実験計画立案、余分な実験の省略、研究室内、研究室外とのコラボレーションの迅速化が徹底されていると感じました。自分にとっては初めての海外留学でしたが、その研究スタイルや哲学の違いに、感銘を受け続ける二ヶ月間だったと感じます。

小脳の顆粒前駆細胞は一見均一に見える細胞集団ですが、多様な個性を持ったサブグループが存在することが、これまでの我々の研究によってわかってきています。私は、この細胞の多様な個性がどういった機構によってもたらされるのかについて研究するために、この研究室に短期留学させていただきました。自分は小脳発生の研究を行なっていますが、ここでは自分とは異なる様々なバックグラウンドの先生方が多様な観点から柔軟な発想でアドバイスをしてくださいました。特に、癌研究の視点から自分の研究を見直すことができるようになったことは自分の財産になったと思います。DKFZで私が行ったセミナーでは、私が捉えている顆粒前駆細胞のサブグループが癌の原因になっているという可能性についてご指摘いただきました。滞在中は、顆粒前駆細胞の単離培養、単離培養した顆粒前駆細胞へのウイルスベクターを用いた遺伝子導入、単離した顆粒前駆細胞を再びマウス個体に導入する実験などを学ばせていただきました。現在もそのラボの皆様とは、共同研究という形で密接にコミュニケーションを取らせていただいています。

このような素晴らしい研究推進の機会を与えてくださった「個性」創発脳の新学術領域の関係者皆様に、心より感謝いたします。恵まれたチャンスをどこまで活かしきれたかはわかりませんが、将来研究者を志し、海外での研究も行いたいと考えている身としては、大変素晴らしい経験をさせてもらえたと感じています。この経験を活かして、今後も研究活動に邁進していきたいです。ありがとうございました。

Stefan Pfister教授