活動

2017年3月13日

国際連携活動レポート:アルバート・アインシュタイン医科大学 廣井昇教授セミナー

本領域では国際連携活動の一環として、国際活動支援班の研究協力者である、アルバート・アインシュタイン医科大学の廣井昇教授を招聘し、2017年3月上旬の約一週間をかけ、計画研究の拠点4ヶ所でセミナーを開催しました。3月3日に東京の国立精神・神経医療研究センター、6日に東北大学、8日に九州大学、そして9日に京都大学でご講演を頂き、セミナーの前後では計画研究関係者とのディスカッションも行われました。

ご講演の内容は、いわゆるCopy Number Variation (CNV) と精神疾患や発達障害の関係について。CNVとは染色体上のある領域が欠損したり重複したりすることです。人口中の多くの人と比べ、その領域が欠損していたり重複している場合(コピー数が違う場合)、精神疾患や発達障害になりやすくなるというケースがいくつか報告されています。廣井先生はこれまで、22番染色体上にあるCNV(22q11.2という領域)と統合失調症や自閉症スペクトラム障害の関係をモデル動物などで調べてこられました。このような染色体上の領域にはいくつかの遺伝子が含まれます。22q11.2に存在し、対応するマウスの染色体上の領域にも存在するものの中から、廣井先生は特に、Tbx1という遺伝子に着目してこられ、この遺伝子とマウスにおける神経と行動の表現型・病態の説明がされました。

印象的だったのは、これまでの御研究の内容を「個性」という観点から考察し直して議論されていたことでした。さらに今回は、短期間に4ヶ所でセミナーが開かれたため、同じ内容の講演に対し、バックグラウンドが異なる各所のオーディエンスが、異なる角度から質問を投げかけ、多角的に議論がなされたのも印象的でした。

2017年4月からは公募研究課題も新たに参画してまいります。今後も多様なバックグラウンドをもった研究者と多角的な議論を続け、「個性」という多面的な概念について、研究を進めて参りたいと思います。

九州大学でのセミナーの様子