活動
2017年3月23日
第10回神経発生討論会開催報告
京都府立医科大学・大学院神経発生生物学
准教授・野村真
2017年3月10-11日にかけて、仙台近郊の秋保リゾートホテルクレセントにて第10回神経発生討論会が開催されました。本会は神経発生学に特化した内容の研究会で、2006年に生理学研究所・分子生理部門の池中一裕教授をはじめとする方々が世話人となって発足しました。特に発表後の質疑応答に十分な時間をかけることで若手研究者の育成を図ることが大きな目標として掲げられています。今回は初回から数えて10回目の記念すべき会ということで、一泊二日のリトリート形式で開催され、世話人の一人でもある東北大学医学系研究科の大隅典子教授、吉川貴子助教、そして私野村がオーガナイザーとして会の準備と進行を務めました。
討論会では若手研究者10名の口頭発表が提供され、その後の質疑応答時間でも若手を中心に活発な議論が展開されました。また、本研究会は数年前より韓国の神経発生研究者との交流を行っており、今回も韓国側から3名の若手研究者(ポスドク1名、PI2名)の講演が提供され、非常に質の高い研究内容と魅力的なプレゼンテーションに韓国生命科学研究の隆盛を感じました。韓国側からはさらに2名のシニア研究者が随伴し、日本の研究者との交流を深めておりました。海外招待研究者や毎年増加している海外からの留学生の参加を考慮し、口頭発表はほぼすべて英語で提供され、質疑応答も英語と日本語が混在した形での進行となりましたが、本会を通じ日本の若手研究者の英語議論能力が大きく向上していることを感じることができました。また学生の発表の場を設けたいとの意図から、11名のポスター発表者による1分間のポスターフラッシュトークを行いました。この企画は非常に好評を博し、特に韓国側から彼らの研究会でもぜひ取り入れたいとの感想を頂きました。さらに今回は愛媛大学の村上安則先生に脳進化形態学の特別講演をお願いしました。様々な脊椎動物の脳発生プランの共通性と多様性についてご紹介頂き、講演後はフロアからも盛んな質疑応答が展開されました。バンケット終了後もホテルの随所において参加者がリラックスした形で研究内容について討議する様子が見られ、泊まりがけのリトリート形式の良さが最大限に活用されたのではないかと感じております。
折しも3月11日に本会を開催する運びとなり、東日本大震災の犠牲者の追悼と被災地の復興を祈り本会2日目の朝に参加者全員で黙祷を行いました。総勢96名の参加者を迎え、風まだ冷たい春の東北での研究会を盛況のうちに終えることができたことに大変安堵しております。本会の準備でお世話になりました名鉄観光の後藤様、竹内様、さらに大隅研究室の方々、また本会をご支援頂いたabcam 佐藤様、遊橋様、そして新学術領域「個性創発脳」に深く感謝申し上げます。