活動
2017年12月18日
第1回A01班集会 活動報告
日時:2017年12月9日(土)
会場:東京大学大学院教育学研究科
保前 文高
首都大学東京 人文科学研究科 言語科学教室
2017年12月9日土曜日に、A01班の計画研究と公募研究のメンバーを中心として、「個性をとらえる基本概念」と題した集会を開催いたしました。A02班、A03班からも出席者があり、約30名が東京大学大学院教育学研究科に集まりました。大学院生や若手研究者の参加も数多くありました。7月に行われました第2回領域会議では、「個性」をどのようにとらえているかを各研究代表者が紹介しましたが、会議における議論をふまえて、個性の多様なとらえ方の中にも共有する方向性を探る試みを目的としたのが本集会です。
最初に保前が集会の趣旨を説明し、本来内在する個性を他との相対化によって捉えることについてイントロダクションを行いました。続いて、若林明雄先生(千葉大学)から「心理学的個人差研究の動向と、基本的個人差次元」についてご講演頂きました。心理学的個人差研究の主要テーマである認知的能力、パーソナリティ、認知スタイルについて、歴史的背景とその測定方法について詳細にご説明頂きました。また、得られた結果をどのように次元化して捉えるかということについても、既存のモデルだけでなく、若林先生ご自身のご提案を交えながらお話し頂きました。ご講演をもとにして参加者から質問があっただけでなく、活発な議論がなされました。その中で、和田真先生と梅沢侑実先生(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)から現在進行中の研究について話題提供をして頂きました。
議論がつきない中、休憩を挟んで、柴田智広先生(九州工業大学)より「個性は生物に内在するか」という題でご講演頂きました。領域内連携に繋がる技術紹介のあとで、高次元データを低次元空間に次元を落として記述することや統計分布を用いて個性をどのように表現するかについてお話し頂きました。個性を計算機のアーキテクチャーの視点で捉えるとどのようになるかとの話題も投げかけて頂き、参加者を交えての討論となりました。遺伝要因と環境要因を含めて、A01、A02の両班の班員にとって同じ枠組みで考える機会になったと思います。また、河田雅圭先生(東北大学)から、進化の視点で個体差を捉えることについて話題提供をして頂きました。
最後に領域代表者の大隅典子先生(東北大学)から、まとめと今後の予定についてお話し頂いて散会となりましたが、4時間あまりの集会で「個性」についてそれぞれに考えると共に、直接話をすることで新たな認識を持つことができたのではないかと思います。終了後にも個別に議論を続けたり、領域内連携の相談があったりと、しばらくは話が尽きない状況になりました。また、希望者には、会場となりました東京大学大学院教育学研究科の多賀厳太郎先生の実験室でラボ紹介も行われました。今回の議論が、研究を進めるにあたって何らかの手がかりとなり、次回の領域会議に繋がることを願っております。