活動
2018年1月12日
次世代脳プロジェクト 冬のシンポジウム2017活動報告
2017年12月20日(水)~22日(金)に、脳科学に関する新学術領域が一堂に会した「次世代脳プロジェクト冬のシンポジウム」が、一橋大学一橋講堂にて開催されました。本領域からは、「意志創発の進化・脳・心理基盤」と題した5領域合同公開シンポジウムに研究計画および公募研究班から1演題ずつ、ポスター発表に計22演題が参加し、3日間にわたり活発な議論が展開されました。
「意志創発」にテーマがおかれた5領域合同シンポジウムでは、ヒトや動物の意志を神経科学、社会生物学、精神生理学の側面から理解しようとする試みが紹介されました。多岐にわたる研究内容からは、個体を特定の回路機能だけでなく、全体としてとらえることの大切さが改めて浮き彫りになりました。特に、グループ内における社会的な序列が、個体の意志と行動に顕著な影響を与えることを示した研究は興味深く、「個体」としてとらえることは「個性」を調べるためにも重要であると感じられました。シンポジウムの最後には、岡ノ谷一夫先生(東京大学)と福田正人先生(群馬大学)から講評をいただきました。岡ノ谷先生からは、計算・表象(生理)・解剖の3つが揃うことにより個体の行動理解が深まるという概念モデルが紹介されました。近年の領域研究については、光遺伝学などの技術浸透に対する評価とともに、パラダイムの固定化(特定の手技ではなく問題発見を大事にすることの欠如)に対する懸念をご指南されました。また、福田先生は精神科医師の御立場から、ヒトの意志および行動の理解には、ヒトを全体として、人生をも含めて捉える必要があるとご指南されました。両先生方は共通して、個体の意志と行動の研究においては、他個体との比較をふくめ、生態学的な妥当性が考慮される必要があるとご提案されました。ポスター発表においても、大学院生からポスター審査員の先生方まで多くの研究者が集い、密度の高い議論がなされました。特に、若手研究者間での交流が盛んに行われ、通常の学会では見られないような、研究テーマの垣根を越えた意見交換がなされました。全体を通して、領域間を横断する活発な議論がなされ、大きな視点から「個性」を問うことの大切さを改めて感じた冬のシンポジウムになりました。
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