活動

2018年8月28日

第1回国際シンポジウム “Towards Understanding INDIVIDUALITY” 報告

2018年7月24日(火)午後~25日(水)におきまして、京都大学・芝蘭会館にて第1回国際シンポジウムを開催しました。領域関係者・一般参加者含めて計165人の参加がありました。日本列島を襲った記録的な猛暑でありながらも、予定していた海外からのゲストスピーカーも全員参加発表頂くことができ、盛会にて幕を閉じることができました。以下に、シンポジウムの報告をさせて頂きます。

本イベントは、本領域にとっての初めての国際シンポジウムでありました。「個性の科学」という世界的にもまだ興隆期にある学問分野をテーマにして、どのような開催様式をとれば、個性研究の未来につながるような、さらには、個性研究の黎明期における重要なキックオフイベントの一つとして後から振り返るに値するものにできるのか、と議論を重ねました。領域総括班の一致した意見としては、まずは招聘するシンポジストには、個性研究をすでに先鋭的に実施されている研究者、今後の個性研究の中核に関係してくると考えられる研究テーマを勢力的に実施している研究者を招聘し、活発な議論を忌憚なく実施することが肝要であろうというものでした。そのために、A01、A02、A03項目ごとに議論を重ね、国内外から一流の研究者を招聘しました。結果として、招聘した海外のシンポジストの所属先は多岐に渡り、オーストリア、アメリカ、フランス、イスラエルと国際色豊かになりました。また、招聘した研究者の研究対象も多岐に渡り、ヒト、霊長類、げっ歯類、魚類、鳥類、昆虫など様々なモデル動物が講演の中に登場しました。研究分野も同様にバラエティに富むものとなり、発生学、発達脳科学、分子脳科学、システム神経科学、心理学、言語学、数理工学、統計物理学、情報科学などと多岐に渡りました。また、医学的な見地からみた個性研究についても演題がありました。

一つの懸念として、このような多岐にわたるシンポジストが一同に会したことによる相乗効果の裏返しとして、シンポジウムのテーマや議論が発散してしまうのでは、という心配がありました。しかしながら、振り返ってみると、この点は完全な杞憂に終わりました。それぞれのシンポジストは、これまでの研究内容や最新の研究内容について、個性研究という切り口でどのようにデータを解釈し、議論を膨らまし、今後の新たな研究テーマを設定できるかという提案や議論において、最大限の努力を払ってプレゼンテーションを実施頂いたように感じております。

本国際シンポジウム開催の最大の目的は、領域のテーマである動物の「個性」や「個性の創発基盤」についての研究が、世界的な研究の歴史にどのように位置付けられ、また、将来的にどのような具体的課題を設定して今後の研究を進めるべきかについて、本領域の現在の立ち位置を確認するというものであったと思います。その点では、シンポジストの先生方の多岐にわたる研究の歴史と最先端を学ばせて頂くことができました。特に、発生学、発達脳科学、神経科学、心理学、そして、統計学、情報科学の分野においても、シンポジストの先生方はそれぞれの観点から動物個性について考察を重ねて来られており、今こそ、「個性」の研究が新たな学問体系として確立される時期に差し掛かっているタイミングであることを改めて認識させて頂くことができたことが、一番の収穫であったと感じています。

国際シンポジウム開催のもうひとつの大きな目的は、「個性」の研究を今後推進するための国際連携ネットワークの構築です。海外から参加頂いたシンポジストの先生方には、先立って開催された第3回領域会議中から来日頂き、十分な時間をとって交流と意見交換をすることができました。また、国際シンポジウムではポスターセッションを設けて、計63題のポスター発表が行われました。ここでも、口頭発表中の質疑応答では議論し尽くせなかった点や、多くの若手研究者の最新の研究について、活発に議論が行われました。

開催の挨拶を頂いた大隅先生、閉会の挨拶を頂いた中島先生のお言葉にありましたように、今後、「個性学」や「個性創発学」という新たな学問分野・体系が確立されるための第一歩となるような国際シンポジウムとして、盛会にて幕を閉じることができました。一方で、新たに興隆してきた学問分野に対して、一度「〇〇学」や「××学」と名前がついて体系化されてしまうと、その後は細分化され、限られた研究者による閉じたコミュニティー内で専門化されていってしまうきらいがあります。今回の国際シンポジウムにおいても、「個性」についての研究は、学際的な異分野共同研究が必須なものであると再認識できた以上、今後も開かれた議論や情報共有を通じて、領域全体で努力していければと思います。

最後になりましたが、共同オーガナイザーを務めて頂きました大隅典子先生(東北大学)、中島欽一先生(九州大学)、総括班の先生方、及び、大隅研秘書の赤井田様、助教の吉川様、国立精神神経センター 星野研のみなさま(早瀬様、江草様、足立様、嶋岡様)には大変お世話になりました。また、京都大学 生命科学研究科 脳機能発達再生制御学の山田さん、鈴木さん、松本さん、大木くん、Ozgunさん、長崎くん、中河くん、奥田くん、及び、京都大学ウイルス再生医科学研究所の影山研究室秘書の澤田さんには、長期に渡り大変お世話になりました。お陰様で、大きなトラブルは何もなく、国際シンポジウムが盛況のうちに終わることができたことに改めて感謝申し上げます。

(文責:京都大学生命科学研究科 今吉 格)

領域関係者・一般参加者含めて計165人の参加がありました。

ポスター発表においても、活発な議論が行われました。

酷暑でしたが、京都の夏も満喫して頂きました。

Thomas Bourgeron(パスツール研究所)に挨拶を頂きました。