活動

2021年1月29日

第5回領域会議報告

2020年12月18日(金)、19日(土)の両日にわたり、第5回領域会議をオンラインにて開催しました。当初の予定では、8月下旬に北海道苫小牧市での国際シンポジウム、12月ごろに仙台において、2020年度の領域関係の会議を予定していました。しかし、世界規模での新型コロナウィルス感染拡大の影響で、国際シンポジウムは2021年夏に延期、領域会議は完全オンラインという形式での開催になりました。ただ、2020年初頭からの新型コロナウィルス対策のために、各種学会・研究会・シンポジウムのみならず、大学・大学院の講義や研究室でのミーティングなど、ほとんどの方がオンラインイベントを経験されていたこと、特にオンライン会議システムZoomの使い方に精通されていたこともあり、盛会のうちに終えることができました。まずは、例年の経験値があまり参考にならない中、会議を円滑に企画・運営してくださった関係者のみなさま、特に大隅研のスタッフのみなさまには改めて感謝の意を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

今回の領域会議は、2016年秋に発足した「個性」創発脳として、最後の領域会議になりました。新学術領域研究は、一人もしくは少数の研究者で行われる基盤研究と異なり、数十にわたる研究グループがそれぞれの新学術領域が掲げる共通の「お題」(本領域では「個性」とは何か?「個性」を創発する生物学的・神経学的基盤は何か?)に分野を横断的かつ学際的に取り組むことを目的としています。face-to-faceで顔を合わせ、他愛もない話から生まれる共同研究のきっかけとして、オンサイトの領域会議が果たす役割を改めて感じたのも、逆の意味で新たな発見でもありました。2020年はコロナ禍のため、新たな共同研究の醸成の場が少なかったのは大変残念でした。特に第二期(後期)に公募研究として参画していただいた先生方との共同研究・連携研究を領域として十分に進められなかった点、進める仕組みを今から思うと、もう少し考えておけばよかったと個人的には少し後悔しています(そうは言っても、自分の研究室をコロナ禍でいかに運営するかで当時も(今も?)頭がいっぱいだったのですが…)。

領域会議は、アドバイザー、学術調査官の先生方にもご参加いただき、計画班および公募班の全研究代表者、44演題の口頭発表と、Zoomのブレイクアウトルームを用いた31題のポスター発表が、二日間に渡り朝から夕方まで濃密に行われました。また、今回は「若手研究者データ解析・共有基盤創出チャレンジ(若手チャレンジ)」の採択者による発表も行われました。これは、若手支援班の今吉先生が中心となって企画された「若手チャレンジ」に採択された博士研究員、大学院生による発表です。コロナ禍において、大学や研究所などでの研究活動が制限された若手研究者に対して、数理統計解析・バイオインフォマティックスや、データマイニングの手法・技術の習得、データシェアリングプラットフォーム構築に貢献するためのノウハウの習得等を通じて、将来的なステップアップや独立に向けた研鑽の場を提供することを目的として企画されたものです。その企画内容に沿って、若手研究者からの応募を募りました。合計10件の採択をし、領域会議ではそれぞれ約5ヶ月間の成果を発表していただきました。いずれの発表も5ヶ月という短期間、しかも研究活動に制限がある中で、素晴らしい成果をあげていただけたと思います。

領域会議1日目の最後には、本領域の立ち上げから終始一貫変わらぬ姿勢で領域を応援していただいた領域アドバイザーの鍋島陽一先生から特別講演をいただきました。鍋島先生からは、まだ何の基盤もなかった「個性学」の標榜から4年半に渡る本領域の成長の過程に関して、お褒めの言葉をいただくことができました。また、個人的には、鍋島先生のご講演の中で、ご自身の研究スタイルを「時には他人の論文など読まずに自分の研究に没頭する時期があったし、そういう時期があってもいいのではないか」という趣旨のお話をされていたことがとても印象的でした。利根川進先生も著書の中で「何をやるかより、何をやらないかが大切だ」と述べられています。SNSなどを通じて瞬時に世界中に情報がとびまわる世の中。もちろん、自分の研究がどのような立ち位置にあり、どのような方向性で進めるべきか、俯瞰することの重要性は言を俟たないのですが、流行りに流されず、時に周りの喧騒から離れ、自分の研究にひたすら没頭する時間の重要性も改めて認識した貴重な時間になりました。

領域としては4年半の活動をひとまず閉じることになりますが、本領域に携わった研究者が、それぞれの立場で「個性」研究という研究領域のさらなる発展につながるような努力を今後も続けていければと願っております。

(文責:郷 康広)