活動
2021年2月19日
「若手研究者データ解析・共有基盤創出チャレンジ」研究成果報告
マウス超音波コミュニケーションの新規解析指標の評価:
自閉症モデルマウスへの適用
公募研究A02菅野班
鹿児島大学法文学部人文学科 心理学コース 神経科学研究室
学部4年 蘭 子国
近年、齧歯類の超音波発声(USVs)の研究が盛んになされており、特に発達障害動物モデルを用いた研究では、言語発達様の行動指標として重要な解析項目と認識されつつある。USVsの解析では、単位時間あたりの発声回数、音節の長さ、周波数などの解析のほか、音節の分類が重要視されている。しかし、音節の分類は時間周波数特性(ソナグラム上の見た目)を目視で選別しなければならず、分類法が研究室によって異なることがあり、どのような分類が適切なのかを判断する統一的な基準もいまだ定まっていない。また、解析作業には膨大な時間を要する。そこで、我々はUSV解析を行う際に、あえてシラブルの分類をせず、新しい解析指標として、音節の周波数の変動係数(cvfreq)を導入し、これにより抑揚の強度を数値化することで発声の複雑さを評価することを試みた(Fig. 1)。Cvfreqは、東京大学の橘亮輔博士と本研究室などが共同開発したMatlabベースのソフトウェアであるUSVSEGの最新版で算出される。
本領域のデータシェアリングプラットフォームに登録された父加齢マウスの仔の音源(大隅研からの提供)を解析した結果、父加齢マウスの仔は若い父マウスの仔と比べると、複雑なUSVsを発さない傾向が見られた(Fig. 2)。今後、本領域ですでに成果が得られている研究で用いられたモデルマウスの音声をさらに解析することで、この指標の妥当性を検証し、簡便かつ信頼性の高いUSVsの解析方法を確立していきたい。