活動
2021年2月19日
「若手研究者データ解析・共有基盤創出チャレンジ」研究成果報告
意識的に制御不可能な現象の発生時に現れる神経活動等に関する数理モデルの構築
計画研究A03駒木班
安藤 瞭
東京大学大学院情報理工学系研究科 修士一年
徳島文理大学・神経科学研究所の冨永貴志教授らは光計測という手法を使い, 嗅周野と嗅内野などの脳の膜電位データを測定し, それらの関係性を研究されました. これらは記憶に関係した部位で,与えられたタスクによって二つの領域間の相互作用の仕方が変わります. そして, 実は嗅周野のarea35と呼ばれる部位がこの相互作用の仕方に大きく影響を及ぼしているのである, ということが冨永教授らの研究で明らかにされました.
今回は冨永教授にその研究で測定されたデータを提供していただき, そのデータの解析をテーマに研究を行いました. ご提供いただいたデータはマウスの脳スライスデータで, 嗅周野の表層を刺激した際に現れる膜電位変化を記録したものでした. このデータを統計学的にうまくモデリングすることにより, そのまま観測するだけでは得られない隠れた情報を得ることがこの研究の最終目標で, 何とかうまいモデルを考えようと奮闘しました. 結局, 今回の研究では膜電位が以下の図のようなモデルのもとで変化していることを仮定し解析を行うことにしました. この図は発生源が図の橙色の矢印にそって移動しながら膜電位が図の黒い矢印のように四方八方に伝播していっている様子を模式的に表した図です. そしてこの仮定の下で, ベイズ型のノンパラメトリックな手法を用いてモデリングを行いました. 結果は当初ある程度はうまく推定できているようにも見えましたが, 推定された結果を仔細に見ていくと, うまくモデリングできていないと考えられるような点も多く見受けられたため, 今後このデータに対してより理解を深めていき, さまざまなモデリング手法で試行錯誤していく必要があると強く感じました.
この若手チャレンジを通して, 私は多くのことを学ばせていただきました. 普段ならあまり扱うことのない時空間データを扱わせていただいた経験は非常に貴重なもので, このような機会を設けていただいたことに大変感謝しております.