活動

2018年1月16日

作業記憶(ワーキングメモリ)の脳メカニズムを解明
~複数の位置を記憶する空間迷路課題をラットに解かせて検証~
本成果は、2018年1月15日(月)午前11時(米国東海岸時間)発行の英国科学誌「Nature Neuroscience」に掲載されました。

本領域公募研究班代表である東京大学大学院薬学系研究科の佐々木拓哉助教らの研究グループは、ラットに多数の選択肢があるような迷路課題を解かせ、課題を効率的に解くために必要な作業記憶(ワーキングメモリ)が、海馬の神経活動によって形成されていることを解明しました。

私たちは、現在の作業に必要な情報を一時的に記憶し、その記憶に基づいて一連の作業を効率的に実行することができます。これまで、適切な作業記憶を保持するために、海馬やその近傍の歯状回といった脳領域が、どのような役割を果たすかは解明されていませんでした。

本研究グループは、ラットの脳に多数の電極を埋め込み、報酬を得るために迷路課題を解くラットから脳活動を記録しました。解析の結果、海馬-歯状回の相互作用から生じる神経細細群の活動が、適切な作業記憶に重要であることを示しました。特筆すべきは、保持する必要がある作業記憶に対応する神経活動は強く保たれており、逆に、不要な記憶に対しては、神経活動が低下するという点です。つまり、海馬の神経回路には、保持すべき記憶に対応した神経細胞が存在し、これらの細胞が必要に応じて、活動レベルを柔軟に変化させることがわかりました。

本研究により、作業記憶における海馬の役割、そしてその神経メカニズムの一端が解明されました。本研究成果は、記憶すべき項目が次々と変化していくような環境において、適切かつ効率的に作業を進めるための脳メカニズムの解明に向けた布石となります。

本研究成果は、日本時間1月16日(火)午前1時 (米国東海岸時間:1月15日(月)午前11時)発行の英国科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」に掲載されました。