活動

2019年5月1日

神経幹細胞の休眠化・活性化機構を解明 -眠った神経幹細胞から神経細胞をつくりだす-
本研究成果は、2019年5月1日(米国東部標準時)に科学雑誌「Genes & Development(ジーンズアンドディベロップメント)」に掲載されました。

京都大学大学院・生命科学研究科の今吉格 教授(計画研究代表)らの研究グループは、影山龍一郎 京都大学ウイルス・再生医科学研究所教授(兼・京都大学 物質ー細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)副拠点長)、末田梨沙 生命科学研究科博士課程学生、播磨有希子 ウイルス・再生医科学研究所研究員(現・ハーバード大学研究員)らの研究グループと共同して、神経幹細胞の休眠化および活性化が2種類の遺伝子Hes1とAscl1によって制御されていることを発見しました。

神経細胞(ニューロン)の元となる神経幹細胞は、胎児期には盛んに増殖して多くの神経細胞を生み出しますが、大人になると神経細胞をつくる能力が低下した休眠状態になります。これまでの研究から、胎児期の神経幹細胞ではHes1とAscl1の発現が振動しており、この振動発現によって活性化状態になることがわかっていました。しかし、休眠状態に陥るメカニズムは明らかになっていませんでした。

本研究において、成体脳に内在する神経幹細胞を調べたところ、Hes1の発現が持続しており、一方Ascl1はHes1によって持続的に抑制されるために発現していませんでした。そこで、ウイルスベクターを用いて休眠状態の神経幹細胞にAscl1を導入したところ、成体脳に内在する神経幹細胞を活性化し、神経細胞を産生することに成功しました。つまり、Hes1の発現が振動するとき(Ascl1の発現も振動)に神経幹細胞は活性化し、持続するとき(Ascl1は発現しない)には神経幹細胞が休眠化することが明らかになりました。

本研究成果は、生後脳の可塑的性質のひとつであるニューロン新生の制御メカニズムを明らかにしたもので、生後の個性創発機構の解明につながることが期待されます。

発表論文

Risa Sueda, *Itaru Imayoshi (equal contribution), Yukiko Harima and *Ryoichiro Kageyama (2019). High Hes1 expression and resultant Ascl1 suppression regulate quiescent vs. active neural stem cells in the adult mouse brain Genes Dev.. 33: 511-523; Published in Advance March 12, 2019, doi:10.1101/gad.323196.118

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