活動
2021年9月7日
ゲノム編集により生成されたエピトープタグノックインマウスを使用した精巣におけるREST発現の検出
大隅班、公募研究代表者井上由紀子先生らの共同研究論文が*Developmental Dynamics*誌に掲載されました
ヒトやマウスでは加齢により精子のDNAメチル化レベルが変化することが知られています。我々は以前、加齢によりメチル化レベルの減少した精子のゲノム領域にはRESTと呼ばれるタンパク質の結合モチーフが高度に濃縮することを発見しました。したがって、精子形成の過程におけるRESTの機能が加齢に伴う精子DNAの脱メチル化に関係していると考えられますが、これまで精巣におけるRESTタンパク質の発現については詳しく調べられていませんでした。
本研究では、まず市販の抗REST抗体を用いて精巣に発現するRESTタンパク質の検出を試みました。しかしながら、本研究で用いた3種類の抗体によるタンパク質局在解析の結果全てがin situハイブリダイゼーションによるRESTのmRNA局在解析の結果と一致せず、抗体の特異性に問題があることがわかりました(図A)。
そこで本研究では、CRISPR-Cas9システムを利用して内在性のRESTタンパク質にエピトープタグを付与し、免疫染色によりエピトープタグの検出を試みました。その結果、RESTは精原細胞と呼ばれる精子形成の初期段階の細胞と精子形成を補助する体細胞であるセルトリ細胞に局在することを発見しました(図B)。
RESTはエピジェネティックな修飾を介して遺伝子発現を抑制する機能があることから、今回の結果は、精原細胞で発現するRESTが精子のエピジェネティックコードに影響する可能性を示唆するものです。さらに、本研究で開発したノックインマウスは、神経疾患や加齢性疾患などRESTが関与することが示唆されている疾患の病態解明にも役立つと考えられます。(文責:木村龍一)
発表論文
https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/dvdy.417